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蛍光灯とテレピン

火曜日、久しぶりに画材屋に行った。

日本橋にあるササべ。閉店時間が30分はやまっていて18時。仕事の帰りでかなりぎりぎり。天下茶屋で地下鉄に乗り換えて日本橋の駅でおりてはや足で。

地上に出て、堺筋を北に数百メートル歩いて橋渡る手前、右に入ったところにある画材屋。

堺筋もこのご時世人通りはめっきり減っていたけど、この数年は海外の団体さんでいっぱいだったから、またちょっともとの堺筋の雰囲気にもどった感じもした。


15年くらい前、ドイツから日本に帰ってきたての頃、作品制作の題材探すのにスケッチがわりのちっちゃいカメラもってよく市内をうろうろ歩き回ってた。大阪のごちゃごちゃは基本的にどこもかも新鮮でおもしろいのだけども特に堺筋はなんというか特別だった。

短編映画みているみたいな通りやな、と思ったのをおぼえている。

地下から地上に上がる薄暗いがらんとした地下通路と階段からしてなんか異次元な空間で、地上に出たらすぐにある横断歩道は、信号をまもらん人が多すぎるのであっちにもこっちにも警察がいてて、平気でひとが広い道路を横断してておまわりさんがぴぴーって笛吹いてた。歩いてる人も風貌もなんとなく不思議な感じというか。

場外馬券売り場があるし。


コインパーキングの入り口にある小さいボックスのなかに座ってるおじさんが小さい窓から顔をだしてずーっと一点をみつめてうごかなかったり、真っ赤なドレスをきた女の人が歩いてたり。

橋のところの道端に座って鉛筆でスケッチしてたら、喫茶店の前に黒のスーツにサングラスの人がいっぱい集まりはじめて、何やろと思ってたら真っ黒のごついベンツが停まって親分であろう人がおりてきてみんなハハーって感じでお辞儀して、ぞろぞろと喫茶店に入っていったり。大通りから横道に入るところに女の人がひとりなにをするでもなく結構長い時間立っていて、なんかその不自然さが不思議だなと思ってみてたら、そしたらタクシーが女の人の前に停まってサラリーマン風のふつうのおじさんがおりてきて、一言も言葉を交わすことなく1mくらいの距離感のままふたりで横道に入って行ったり。

多分、いろいろは大阪どこでもあることなのだろうけど、大きな通りなのに堺筋は御堂筋とかとは違う独特のしずけさみたいなのがあって、そんな寡黙な背景が人間模様を浮き立たせるんかな。

Aki Kaurismäkiの映画のワンシーンみたい。




堺筋に来るたびに、絵描かな、作品つくらな、とあせりながら彷徨ってたあの頃の自分を思い出す。まあ今もあんまり変わってないけど。


久々の笹部画材は相変わらず蛍光灯の明かりと、キャンバスとテレピンやらの匂いに満ちていた。心が満たされる匂い。閉店間際だから急いで紙やら絵具やら筆やら鉛筆やらを選ぶ。持ち帰れるぎりぎりの重量分いっぱいの画材。画材屋では金銭感覚が崩壊する。

笹部画材の2階にはエプロンをした若い女性の幽霊がいるというのをきいたことがあって、

笹部に行くたびに、もしかしたら私にもみえるかもとものすごく意識してみるのだけれども、やっぱり私にはまったくなにもみえない。ただ、なんかいてそうやなという感じはなんとなくする。










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