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誰の目にもとまらない。


人の生活の風景や、いろんな人間模様みたいなものに出くわす、ということがめっきり減った。電車の中もしーんとしてる。なんかつまらん世の中やな‥とも正直思う。ソーシャルディスタンス、もううんざり。まあ、自分に集中するための良い機会ととらえよう。


一昨日、うちの前の道路でガス工事があって、片側通行になっていて、なので交通整理のガードマンのおじさんが旗持って立っていた。

ゴミ出しで私が外に出た時、ちょうど休憩のタイミングかなんかで別の若いにーちゃんに旗を渡してはる時で、おじさんがうちの庭の大木をみあげながらそのにーちゃんと「立派な木やな〜」みたいな話しているときに私が外にでてきたから、なんか自然な流れでその方と立ち話。


おじさんはすらっと長身でお歳のせいか少し猫背気味で、髭と髪の毛は白髪まじりで、品格のあるおじいさんという感じで、なんというか仙人のような感じの方。目が優しくて澄んでいる。

おじさんは、「これは、すばらしい。ここの緑は本当に貴重だ。ほんとうにすばらしい」と何度も感嘆するように木や新緑もりもりのあけびのつたやらを眺めながらしみじみ言ってくれた。「ご近所に葉っぱは撒き散らすし、夏は蚊は多いし、住宅地でそのままの緑を維持するのはなかなか大変です、、、。」って私がぼやいたら、「いや、そのまんまだからいいんです。ここの草も木もほんとうにいきいきしている。僕はこういうところが好きだ。土があって水があって。とっても安心する。」ってまたしみじみ言ってくれた。


多分、日雇いか派遣かでこの仕事をしてはるんやろなと思う。作業着の感じやにおいやなんとなくの様子では家族がいる家で毎日お風呂に入ってこぎれいにして、という生活ではない感じのおじさん。

言葉が関西ではなかったからご出身はどちらですか?ってきいたら、九州です、とのこと。でも和歌山の白浜で長いこと働いてました。っていいはったので、私、龍神村育ちですっていったら、あああそこはいいとこですねえ、温泉もいいですねえと、龍神温泉知ってはった。


休憩終わってまた旗持って、一日中同じ場所でずーっと立ってはった。車が通る度に「すみません、ご迷惑おかけします」ってものすごくはっきり丁寧に頭下げながら車を誘導してはった。

なんか知らんけども、私は一日そのおじさんのことが気になった。なんなら、お風呂はいっていきはりますか?って言いたかったし、カレー作ったんでどうぞ、ってタッパーに入れて渡そうかな、とか、ビール6缶パックお疲れ様ですって渡そかな、とかそんな気持ちにすらなった。でも、多分そんなのは受け取りはらないだろうし、さすがに他人の私がなんかおかしいよなと、結局自分の中でぐるぐる思っただけで日が暮れた。


町のなかの住宅地で”自然のまま”を維持するのはとても大変。(まあ、私の気力と経済力の問題なのもわかってるのだけども。)

地域の周りのため池もどんどん埋め立てられてるし、ため池は蚊の発生源という認識が世間の人には普通だし、近隣のおうちは庭師さんがきっちり切って近所迷惑にはなってないけども、うちの木は風が吹くたびに葉っぱをそこらへんにまきちらす。そもそも落ち葉は町中ではゴミなのだ。だから私はいつもなんとなく肩身の狭い思いでここで生活している。

だからおじさんの優しい言葉が心に沁みたし、九州で生まれて関西にでてきて、きっと色んなことがあって、けっこうなお歳になった今も一日中道路に立って頭下げる仕事してはるおじさんの人生にも勝手に思いを巡らしたし、白い髭といい優しく澄んだ目といいなんかほんとに仙人のおじいさんに会ったような、そんな気さえするくらい、なんだか不思議な感覚で心がいっぱいになったのだった。


この世界には社会には、誰の目にもとまらない人生がたくさんあるのだなあ。







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